葬儀の知識

知らずにいると損をする?遺産相続の期限や仕組みを解説

遺産相続

自分には故人から譲り受ける遺産があるからといって、何も手続きをしないでいるとせっかくの相続の権利が消滅してしまうこともあります。つい忙しくて…気がつけば時効になっていたといったことがないようにしたいものです。

自分には故人から譲り受ける遺産があるからといって、何も手続きをしないでいるとせっかくの相続の権利が消滅してしまうこともあります。つい忙しくて…気がつけば時効になっていたといったことがないようにしたいものです。

そもそも遺産とは?

遺産というと価値のあるものとイメージしがちです。そもそも遺産とは相続財産ともいわれ、個人所有の全てのものを指します。ですから故人が所有していた財産であっても、プラスの遺産もあれば、負の遺産(借金)もあることをまず知っておきましょう。

故人の遺産を相続するには、相続するための申請手続きが必要になりますが、申請せずにそのままにしておくと、たとえ相続する権利があっても相続できないという事態になってしまいます。それがこれから解説する遺産相続の時効なのです。

遺産相続には時効がある

せっかく相続できる遺産があっても、時効を迎えてしまうのは勿体ない話です。時効を迎えてしまった為に遺産相続ができなかった(消滅時効)といったことにならない為にも、遺産相続に関する時効の知識を知っておかれると良いでしょう。

ではどのようなことに時効があるのでしょうか?相続に関する時効には、それぞれの項目によって違います。長いもので10年、短いものになると3か月といった項目もあります。遺産を相続することがわかれば、自分が相続しようとする遺産の権利やそれに関わる時効を知っておくことが賢明です。
 
それではここからは、具体的な各項目の時効について解説していきます。

① 相続税申告の時効

相続税とは、故人から遺産相続した相続人に対して課せられる税のことです。「相続税の申告」は10ケ月と時効が定められています。相続人はこの期間内に相続税の申告を済ます決まりになっていて、この期間を過ぎてしまうといろんなデメリットが生じます。

相続税の期間を過ぎてしまったために課せられるのが、延滞税・無申告加算税です。さらに意図的な悪質性があると認められてしまうと重加算税まで課せられることになります。相続税を申告した後に、計算上の誤りや申告漏れがあれば修正をし、不足分を納付しなくてはいけません。

その他にも誤りや申告漏れが相続税の申告から5年以上経って発見された場合には、不足分の税金を支払わなくても良いとされています(善意の相続人)。しかし、仮に悪意があったとみなされた場合には7年の時効となります(悪意の相続人)。

②-1 相続放棄の時効

冒頭で説明したように、遺産はプラスの遺産と負の遺産があります。遺産を相続すれば、負の遺産が多いとなると、全ての「相続を放棄」することもできます。その場合、相続放棄の手続きの期限が相続開始から10か月以内と定められています。

この期間を過ぎてしまうと単純承認といって、全ての相続を引き継ぐものとして認定されてしまいます。ただし、期限内に手続きができなかった場合でも、その期間内にプラスの遺産と負の遺産の判断が難しかったというケースもあります。

また、相続放棄の時効が過ぎてから負の遺産が発覚したというケースもあるでしょう。何らかの事情がある場合は、あきらめず専門家に相談してみることをおすすめします。

②-2 相続人全員が相続放棄した場合の時効

遺産相続において、「全ての相続人が相続放棄」するというケースもあります。全員が相続放棄し、さらに管理人も選任されないままの状態ということは、相続財産の権利義務が成り立たず猶予期間となり、時効は停止となります。

③ 生前贈与の時効

亡くなってから遺産を相続した場合は相続税がかかりますが、生きている間に資産を渡すことを「生前贈与」といいます。さらに生前贈与にかかる税金を贈与税といいます。この場合も自分で申告して贈与税金を納めるようになっています。

この贈与税の申告にも時効があり、贈与から6年と定められています。この6年の間に申告を行って税金を支払うシステムなのですが、贈与という観念がなく贈与されているケースや税金を申告するのを知らなかった等(善意の相続人)様々な現状があるのも事実です。

申告の必要性を知らずに6年が過ぎてしまって、かつ税務署からも請求がない場合は、納税義務が消滅してしまいます。また納付義務をしっていてわざと申告を行わなかった場合(悪意の相続人)は、時効は7年となります。

④ 遺産分割協議の時効

「遺産分割協議」とは、遺言書がない状態で2人以上の相続人が存在する場合、誰がどの遺産をどういった割合で相続するのかを話合いで決めていく事です。この遺産分割協議には、相続人全員の参加が不可欠となります。

この話合いの記録は、遺産分割協議書という書面で残すようにします。ただ遺産分割協議を行うにあたっては、申し出や届け出の必要がなく、相続人全員が承認すればどこででも行うことができます。なお、この遺産分割請求権には時効がありません。

⑤ 遺留分侵害額請求の時効

故人の遺産を相続する相続人が複数人いる場合、不公平な分配が行われたとして請求できるのが「遺留分侵害額請求」です。そもそも遺産にはたとえ遺言書であっても侵害できない一定の遺留分というものが定められています。

この遺留分は、故人から見て配偶者・子・直系尊属(父母・祖父母)の相続人に対して、最低限の遺産を確保・認めるものです。遺産分配の際、この遺留分が確保できなかった際に請求できるのが遺留分侵害額請求となります。

この遺留分侵害額請求にも時効があり、1年となっています。また相続開始から10年以内が除斥期間(相続開始を知らなかったなどという場合)となります。いずれにしても、権利が失効しないよう早い段階で請求を行うことが求められます。

⑥ 相続回復請求権の時効

「相続回復請求権」とは、自分(真正相続人)が本来相続すべき遺産が、他の相続人によって遺産取得の主張をされた場合に行使できる権利のことです。また、相続人の対象ではないのに(たとえば血縁関係がないのに)相続人として遺産を取得した人に対して財産の取戻しを請求できます。

この相続回復請求権にも時効があり、相続開始から遺産相続の権利が侵害されていることがわかってから5年間となります。また侵害がわからずに相続開始から20年が過ぎてしまうと、相続回復請求権の権利が失効してしまいます。

請求方法として、先方に直接申し立てする方法と裁判所に申し立てする方法とがありますが、後者の方法を用いることが多いようです。

併せて知っておきたい!① 不動産に関する時効

ここでは不動産に関わる時効で知っておくと便利な知識を紹介します。

不動産の時効取得

土地や家屋などを対象とした時効による所有権の取得制度を「不動産の時効取得」といいます。この不動産の時効所得は、いくつかの要件を満たすことにより他人の不動産を自分の不動産として取得できるというものです。

例えば相続登記が複雑で困難になるほど、土地を長い期間放置していたなどという場合に、こういった不動産の時効取得を使って誰の所有かを定めます。

不動産の時効取得の要件

不動産の時効所得の要件を以下にまとめてみました。不動産の時効所得は大きく分けて2つ、「10年」もしくは「20年」の一定期間に以下の要件を満たすものが成立します。
 
【一定期間が10年の要件】
 
1. 所有の意思があること
 
2. 他人の物を、平穏かつ公然に占有していること
 
3. 10年間占有していること
 
4. 占有開始時に、善意でかつ過失がないこと
 
 
【一定期間が20年の要件】
 
1. 所有の意思があること
 
2. 他人の物を、平穏かつ公然に占有していること
 
3. 20年間占有していること
 
 
※ 賃貸物件に一定期間住んでいる場合や、既に他に相続権を持つ人があることを知っている場合などは、「所有の意思があること」にはあたらない。
 
※  暴行や脅迫の事実があれば「平穏」にはあたらず、隠し事があれば「公然」にはあたらない。

 時効取得したら?

時効が成立し不動産が取得できれば、「登記」を済ませて「所得税」を納めます。(不動産の時効取得で得た土地や家屋は、対象が相続財産であっても相続税の対象とはなりません。)

併せて知っておきたい!② その他の時効に関すること

上記以外にも知っておくといざという時に役立つ、時効に関する知識を紹介します。ここでは「遺言の無効確認の時効」と「預貯金相続の時効」を解説したいと思います。

遺言書の無効確認の時効

「遺言書の無効確認」とは、故人が遺した遺言書に信憑性がないと考えられる場合に、遺言書の効力を審議する訴訟を起こす申し立てのことをいいます。この遺言書の無効確認には時効がありません。

どういったケースで無効確認が行われるかというと、例えば遺言を残した人が15歳以下であったり、そもそも遺言を遺すほどの意思能力がない(認知症等)といったケースです。その他にも遺言書に自筆箇所が認められない箇所があったり、日付や捺印がない等も同様です。

遺言書の無効確認には時効がないものの、時間の経過とともに無効の立証が困難になることが予想されますから、なるべく早く申し立てをするのが良いでしょう。

預貯金相続の時効

故人の預貯金(金融機関預貯金)には、2つの時効が設けられています。「商事債権(企業などとの取引で生じる売掛金)が適用になる銀行は5年」、また「商事債権が適用されない信用金庫・労働金庫は10年」となります。

このように消滅時効が定められていたとしても、故人の死から5年10年経ってから金融機関の預貯金が発見されることもあります。結論からいえば、殆どの金融機関がこの消滅時効を援用せず、故人の預貯金を引き出せるようになっています。

この場合は相続人だけが故人の預貯金を引き出すことができます。家庭裁判所へ申し立てすれば一定額以上の引き出しも可能です。

もし遺産相続の時効が過ぎてしまったら?

いくら相続できる遺産があっても、何も手続きをせずにいると財産は相続できなくなる可能性があります。また冒頭でもお話したように遺産の中に負の遺産があれば、放置することで借金を背負う事になります。

時効が消滅しないうちに遺産に関わる自分の権利や時効を確認しておくことが重要です。自分では確認方法がわからないといった場合には、早い段階で弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

今回は遺産相続に関わる時効について解説してみました。ひとくちに遺産相続といっても、いろんなケースがあり簡単に解決できないことも多いかもしれません。しかし少しでも相続の時効の知識があれば、後悔せずに済むことも。相続に関するリスクを回避するためにも、ぜひ今回の記事を参考にしてみて下さい。

カテゴリ:お葬式のマナー

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